グローランサ備忘録

グローランサ関係の小ネタ記事の保管場所

聖なる金輪貨か、穴あき金輪貨か?

「二人の伯爵」の時代、新パヴィスでは奇妙な貨幣の改鋳が行われた。亡命中のベルヴァーニ伯爵は、陽の天蓋を追われた後、対抗して新パヴィスの太陽街に宮廷を設立した。そこで彼は太陽領への帰還を目論んでいた。


さまざまな大騒動の末にルナーによるプラックスの支配が終わったが、新パヴィスでは貨幣が不足し、貿易、課税、貢物などに支障をきたすようになっていた。ドラゴン・パスの征服を目論むアーグラス王は、太陽領の正統な伯爵として認めさせるため、ベルヴァーニに巨額の金銭を要求した。


太陽領の徴税権も国庫へのアクセスもなく、太陽街の指導者としての地位もまだ確立していなかったベルヴァーニは、この金を捻出するために奇策を思いつく。ロカーノウスの司祭である“棍棒足の”サンドレンに、正当な持ち主に「全額」返還することを約束した上で、太陽街の金貨をすべて集めるよう命じた。


1626年火の季のロカーノウスの聖日、パヴィスの陽の天蓋寺院の前庭で、“棍棒足の”サンドレンは金輪の儀式を新たに考案し、奇妙な儀式を行なった。彼の前には金貨が大量に積まれた。金輪貨の中心に1枚ずつ穴を開けていく。その金貨の中心には、片面に太陽の紋章、もう片面にはベルヴァーニの顔が刻印されていた。


その日の終わりには、中央の硬貨と外周の硬貨の2つの山ができた。金輪貨の真ん中には丸い穴が開いていたが、ベルヴァーニによって、その価値は以前と同じ(銀貨20枚の価値)であることが宣言されたうえで、硬貨は持ち主に返された。これには不満も出たが、ベルヴァーニはイェルマリオに「我が悪しき行いをしているのなら、我を叱責せよ」と呼びかけた。天空は沈黙を守った。


この祝福のためか、あるいはその形からか、この金貨は「聖なる(Holy) /穴あき(Holey) 金輪貨」と呼ばれるようになった(これは太陽領では通用せず、ベガ・ゴールドブレス伯爵はこのような硬貨をすべて没収して鋳溶かし、補償もしないように命じた)。


ベルヴァーニが集めた中心部の硬貨は、アーグラス王への貢ぎ物にも使われた。ベルヴァーニはそれを派手なセレモニーで披露し、欲しがっていた承認を得ることができた。アーグラスはその後すぐにこの硬貨をドラゴン・パスに持って行き、そこで鋳溶かして地金にしたと思われる。ベルヴァーニの金貨は、表向きは銀貨13枚の価値があるとされている。しかし、一般に流通しなかったため極めて希少であり、目の肥えた貨幣研究者にとっては、それ以上の価値がある。