グローランサ備忘録

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アーグラスを理解する

グレッグの考えるアーグラスは、非常に根源的なレベルでアーカットと「同一」であり、オーランスの神話を人間として完全に体得し、活動している。しかし、彼はアーカットやオーランスの行いをそのまま繰り返そうとしているわけではない。実際、彼らの行いを再現しようとは全く考えていない。むしろ、彼はアーカットやオーランスに「なって」、新しい状況に立ち向かっている。新しいことをすることを受け入れるだけでなく、新しいことを成し遂げるつもりなのだ。そのためアーグラスは、ハルマストを含む他のどのオーランス人の英雄よりも、オーランスに同調している。


それが、彼の成功の秘訣である。アーグラスは、神話の再演は不要であるばかりか、往々にして望ましくないことを発見した。重要なのは、世界の根源的な力と原型に参画することであり、宇宙を維持するために変化を起こそうとする意志なのである。


アーグラスの人生が、オーランスのそれとどれだけ重なるか、考えてみる価値はあるだろう。大荒野の異形の神々への流刑。精霊やドラゴンとの交信。結婚と即位、などなど。彼の人生は彼の信じる神とパラレルである。英雄戦争後のさまざまな文化圏で、しばしばオーランスと同じ存在として捉えられていたのも不思議ではない。


これは、アーグラス=アーカットという考えとも結びついている。アーグラスもアーカットと同じように、グバージと戦い、その過程で変容していった。そして、赤い月を破壊し、世界を変えた。アーカットのように、アーグラスは自分の任務を遂行するために怪物を受け入れた。アーカットにはトロウルが、アーグラスにはドラゴンがいた。そしてアーカットのように、アーグラスは月の女神を浄化し、混沌の穢れを取り除くことで、グローランサのサイクルがもはや存在を脅かすことなく、完全にその一部となるようにしたと見ることができるだろう。


非常に基本的なレベルでは、アーグラスとアーカットは同じ存在なのだ。グレッグの初期の物語では、アーガット(アラガットとも)という名の英雄がグバージと戦い、伝説の時代を終わらせ、歴史を開始したとされていた。このキャラクターはその後、グレッグによってサーターの公王であるアーグラスとして『白い熊と赤い月』(訳註:邦題『ドラゴン・パス』)に投入された。後に、彼は“混沌殺し”アーカットとしてグローランサの歴史に登場することになった。しかし、結局のところ、それらは同じ源を持っていたのである。



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