グローランサ備忘録

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ルナー帝国のオーランス弾圧について

ご存知の通り、ルナー帝国は可能な限り特定のカルトを弾圧しようとしている。その筆頭はもちろんオーランスだが、ストーム・ブル、ユールマル、マスターコス、ヒミール、イノーラ、ヴァリンド、ゾラーク・ゾラーンなども公式に嫌悪されているカルトである。ただ敵対するカルトの中には、オスリラ(ルナーが川の住人に対して犯した罪 *1 のおかげで、イェルムを通じて間接的に接触しなければならない)を含め、帝国が許容しているものもある。


しかし、それは何を意味するのだろうか。ルナー・ハートランドでは、オーランスのカルトがシリーラと西域領でなんとか生き残っていることが分かっている。ストーム・ブルのカルトはドブリアンと西域領に分布し、ヨルプ山脈はゾラーク・ゾラーンのカルトの中心地である。ルナー属領地では、人口の10~25%が未だにオーランスに帰依しており(属領地によって異なる)、アガーは1世紀以上ルナー属領地でありながら、オーランスのカルトの活動の中心地である。なぜ、このようなことが起こるのだろうか?


答えは2つある。まず、ルナーはオーランスのカルトのメンバーを見つけ次第殺して回るようなことはしない。実際、サーターなど反抗的な地域を除いては、カルト教団に手を出すことはほとんどない。ルナーのサトラップや総督たちは、カルトが静かにし、トラブルや反乱を起こさない限りは容認することが多い。新パヴィスで、七母神の寺院のすぐ近くに風の寺院があって活動していたのはそのためである(少なくともソル・イール政権の時代には)。


第二に、オーランスは重要な友人を持つことが多い。ルナー属領地では、アーナールダ教団が人口の10~25%を占めており、そのカルトはオーランスと密接な関係にある。その他、光持ち帰りし者たちの友好カルトも人口の6~15%を占めている。これらのカルトは現地の統治者によって公式に許可され、時には推奨されている。オーランスのカルトに強い措置を取れば、その同盟者たちからの反乱を容易に誘発しかねない。ルナーの軍事的・魔法的な資源は限られており、ドラゴン・パス周辺や赤の平原での戦争などが、常に優先度が高い。


そのため、ルナーはこれらのカルトへの敵視は、法的な差別、すなわち余分な税金、特定の職業からの排除などを通じておこなわれる。そして時には群衆による暴力で(特にセアード人の都市の場合)。そのため、例えばルナー属領地の多くでは、少なくとも属領管理の支配下にある地域では、オーランスのカルトは新しい寺院を建てることを許されていない(そしてしばしば時間の経過とともに寺院を失っている)。オーランスのカルトのメンバーは、ルナー当局から常に疑いの目を向けられている。“神々の王”オーランスが支配する古い部族組織は、ルナーの地方支配者に取って代わられる、といった具合に、オーランスのカルトは差別と迫害を受けながら、このまま衰退していくことが望まれている。


しかし、ドラゴン・パスでは少し違う。オーランスは支配の神であり、サーター王朝の守護神である。ドラゴン・パスはオーランスと赤の女神の魔術的な対立の戦場であり、神そのものを倒すことが目的となっている。魔法的な挑戦は軍事的な相を帯びるかもしれないし、軍事的な作戦は魔法的な目標によって推進されるかもしれない。オーランスのカルトのメンバーはもちろんこれに巻き込まれた――しかし、これは主に魔法的な関心によって推進されたのであった。場合によっては、ルナーは農村の儀式を混乱させたり、大寺院を冒涜したりするかもしれない。だがその一方で、自分たちの目の前にある同様の儀式や聖地は無視することもあった。


ここ十数年、これを推進したのは、ルナー野外魔術院の学長である“聡明なる”タティウスであった。周知の通り、タティウスは帝国貴族の有力家門アシディ家の有力者であり、イェルムの司祭かつ赤の女神の入信者であった。赤の皇帝の寵愛を受け、この戦争の最終段階を遂行するためにドラゴン・パスのルナー総督に任命されたほどだ。しかしタティウスでさえ、自らの計画を遂行するために必要な場合を除いて、地元のオーランスのカルトをほとんど無視していた。


タティウスの計画では、ホワイトウォールを陥落させる必要があった。タティウスは、オーランスのカルトの活動拠点を破壊することで、神を倒し、頑強な叛逆神を赤の女神とその息子に服従させることを期待していた。しかし、これは一時的な勝利に過ぎないことが判明した(予期せぬ重大な副次的結果を伴う)。軍事的な逆転は魔法的な結果をもたらし、「グローライン」をドラゴン・パス全域に広げようとした試みは「真竜の目覚め」とともに失敗した。*2


※ ※ ※


グローランサの紛争は、しばしば儀式的な感覚を伴うことがある。カルトの敵は、最も強力な魔法が発動される前や、ヒーロークエストが始まる前に現れることが多い。多くの寺院やカルトはこれを防御するための資源を持っていないため、そもそもこれを試みない。


『煙吹く廃虚』 *3 の「グリーンロックの杜」 *4 というシナリオはこの良い例である。エルフが儀式を行うとき、プレイヤーキャラクターは儀式によって「召喚」されたカルトの敵から木立を防衛する必要がある。もちろん、トロウルやドワーフは自分たちが召喚されたとは思っていない。彼らは、エルフの聖日に木立を攻撃することを「最初から計画していた」のだ!


そしてもちろん、これはルナーとオーランスの争いによくあることだ。占領下では、オーランスの強く呼びおこすことは危険だった。オーランスの敵を呼び寄せることにもなるからだ。解放されたサーターではその逆で、「真竜の目覚め」後のボールドホームでは、赤い月をあまり強く呼びおこさない方がよいだろう!


(Suppression of Orlanth Under the Lunar Empire – The Well of Daliath より)


*1:ルナーはオスリル河のいきものたちを虐殺したことがある。

*2:オーランスを殺したことで、魔術的に光持ち帰りし者たちの探索的な状況を誘発してしまったのだろう。

*3:シナリオ集

*4:The Grove of Green Rock. アルドリアミの聖なる森と、新しい Shanaesee の木を植えようとするエルフの試みが描かれる。冒険者はこの儀式に参加することができる。