グローランサ備忘録

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新パヴィスのアーグラス時代

1625年現在、新パヴィスの定住人口は約5150人であり、サーター人の都市としてはボールドホームに次ぐ。また、大廃都内には1500人が住んでいる。パヴィス郡全体では約2万5500人の定住者がおり、サーターの最大部族人口の2倍以上である。常に5000人から1万5000人のプラックス人が家畜とともに都市周辺に野営している。家畜は街の商人と工芸品、特に金属製品に交換される。これらのプラックス人の多くは「白い雄牛の結社」に所属しており、白い雄牛の化身であるアーグラスを礼拝している。アーグラスの旗印に群がる傭兵や冒険者たちと相まって、新パヴィスには西部劇のような雰囲気が漂っている。白い雄牛の仲間たちは、街中や市壁の外でその技能を披露し、ときに退屈しのぎに決闘し、武器や防具、酒、娯楽を売る商人たちは大儲けしている。


アーグラスは王であり「白い雄牛」であるが、主に戦争と宗教の指導者である。日々の街の運営はアーグラスの仲間に任されている。旧市評議会はアーグラスによって解散させられ、彼の「輪」に取って代わられている。


大廃都やパヴィス郡ではなく城壁内の新パヴィスの主なカルトについて考えてみると、以下のようになる。

  • オーランス 700人
  • アーナールダ 650人
  • パヴィス 400人
  • ヒューマクト 350人(!)
  • ストーム・ブル 325人(!)
  • ワッハ 200人
  • イェルマリオ 200人
  • ゾーラ・フェル 200人
  • イサリーズ 150人
  • グストブラン 150人
  • ランカー・マイ 150人
  • チャラーナ・アローイ 75人
  • ランブリル 75人
  • アイリーサ 50人
  • ユーレーリア 50人


言葉を濁す必要はない。ユーレーリアの遊女は神聖な仲間——ヘタイラ *1 ――であって、単なる街娼ではない。そういうのもたくさんいるんのだろうけれど。


ユールマルのカルトのメンバーも75人から150人いる。アーグラスは彼らにかつての七母神寺院をトリックスターの居場所として提供した *2


Q:白い雄牛の結社は1616年頃に設立された。アーグラスは1621年にハレックと共に世界一周の旅に出て、戻ってきたのは1624年。彼が不在の間、白い雄牛の結社はなぜ存続できたのだろうか? この3年間のリーダーは誰だったのか? A:“青ラーマの”ヤザーキアル *3 、“ウィールヴィッシュ狩りの”ナルミード *4 、“ヒューの”ロネア *5 など、第一陣の新顔たちがたくさんいた。


Q:ギリシャ青銅器時代の都市がもっともっと人口が多かったことを考えると、これらの数字はかなり低いように思われる。ミケーネは約3万人、ピュロスは約5万人だった。 A:ミケーネの面積は約32ヘクタール。もし、完全に建設されたのであれば、4500〜6000人(1ヘクタールあたり150〜200人)の人口があったかもしれないが、そうでなかったことが分かっている。オリバー・ディキンソン *6 は『エーゲ海青銅器時代(The Aegean Bronze Age)』の中で、これらの集落について、人口を推測するのに十分な情報がないと結論付けている。


Q:それはどうでしょう。私は考古学者なんですよ。*7  A:古代都市の人口密度を推定するための学術的な資料はたくさんある。最も単純なのは、建造物の面積に、おおよその平均人口密度を掛けることだ。世界中の前近代都市を調べれば、だいたいの見当がつく。もちろん、都市の人口にはそれを支える農業人口も含まれている。実際、エーゲ海の宮殿コミュニティはそのように機能していたのだろうが、それは完全に推測の域を出ていない。また、私たちが「都市」と聞いて思い浮かべるもの、つまり城壁の内側に作られた地域については、この方法は役に立たない。


Q:混乱を避けよう。ではミケーネの城塞と下町をあわせて、何人くらい住んでいたと推測されるだろうか? A:まず、オリバーが推定しているかどうか調べてみた。彼は「十分に知られていない」と言う。そこで『Cambridge Companion to the Aegean Bronze Age』で調べてみると、新オパイラトル時代のクノッソスの人口は17000人で、ミケーネはおそらく6400人に達したと推定されている。

新パヴィスの面積は約28ヘクタールで、ミケーネとほぼ同じ大きさである。1ヘクタールあたり平均200人近くが居住しており、非常に高密度である。大廃都は2500ヘクタール(!)にも及ぶ。人間以外の住人を含めても、1ヘクタールあたり2、3人以下と思われ、これは信じられないほど低い数字だ。プラックスの大半の地域よりも低いのだ(もちろん、ゴースト、ゾンビ、モンスターはこの数字には含まれない)。

ルナー占領下の新パヴィスは、ルナーの支配下でリックやルノー大尉のカサブランカのように虐げられ、煮えたぎっていたところ。アーグラスの新パヴィスは、カウボーイ、決闘者、傭兵、ダンスホール、道化師協会、宿屋、サロンなど、西部劇の街並みだ。


Q:この街をもっと掘り下げた資料集はないのだろうか? A:ロビン・D・ローズが『新パヴィスと大廃都(New Pavis and the Big Rubble)』の新刊を編集中だが、ルナー占領期を舞台にしたバージョンはこちら。

www.chaosium.com


我々は、アーグラスの新パヴィスがプラックス人と結びつき、スウェンズタウンを通じてサーターやドラゴン・パスと結びついていることも知っている。アーグラスが手に入れたルナーの財宝は1年や2年もたないかもしれないが *8 、そのころには彼はドラゴン・パスに行ってしまう。そこにはルナーの鎧を着たプラックス人はたくさんいるだろう!


火の季の新パヴィスはかなり暑く、一日の最高気温は40℃を超え、夜には20度くらいまで冷え込む。だから、昼過ぎから夕方にかけては、ほとんどの人は自分の家から出かけていると思う(家は、たとえ土でできていても、日中はとても暑いのだ)。だから、ほとんどの人は路上、風呂場、そのほかの日陰にいるのを見ることだろう。


1625年の新パヴィスから世界を眺めると、この街の新しい支配者は白い雄牛の結社と強固な同盟を結び、それがプラックス人を統一して支配している。アーグラスは、1610年のルナー軍をはるかにしのぐ戦力を有している。しかし、彼はプラックス人のカーンと協力しなければならず、カーンたち全員が彼に忠誠を誓っているわけではない。それは彼の運命がドラゴン・パスにあることが分かってきてからはますますそうなる。彼にはコーフルの領主などという最低の仕事をする仲間や知人はいるだろう。


パヴィス郡自体の面積は約1200km2。平均的な人口密度は1平方キロメートルあたり約21人。これはサーターの約2倍の人口密度だが、実はサーターの定住地とほぼ同じだ(サーターは半分近くが原野である)。


地図で見ると、パヴィス郡の耕作地の外には、たくさんの草原が広がっていることがわかる。東スクリーサの良い放牧地は、今はバイソン族、ハイ・ラーマ族、セーブル族などの家畜の群れで埋め尽くされていると予想される。


動物の生態でいえば、セレンゲティ保護区に近いかもしれない *9



また、太陽領の入植地や旧拝領地にも、恐ろしいほど近くに大きな群れがいることだろう。


もし、あなたがイェルマリオ・カルトの指導者であったり、拝領地の開拓者であったりするならば、今こそアーグラスに支持を表明し、あなたの畑に群れを入れないようにしてもらう良い機会かもしれない。


(Argrath’s New Pavis – The Well of Daliath より)


*1:hetaira. 古代ギリシアにおける売春形態の一つ、もしくはそれを生業としていた娼婦。 ヘタイラ - Wikipedia

*2:嫌がらせですか?

*3:青ラーマ氏族のカーン。白い雄牛のアーグラスのパヴィス征服の際に活躍した。第2次ムーンブロス会戦でシツマグを殺し、その頭蓋骨を酒杯にした。2つの資料で「赤い月の落下」でアーグラスに協力したことが触れられている。『グローランサ年代記』参照

*4:バイソン部族のスカルバット氏族のカーン。白い雄牛のアーグラスの新パヴィス征服に参加。

*5:セーブル族のカーン。大荒野を渡り歩いている。白い雄牛のアーグラスのパヴィス征服に貢献した。

*6:グローランサ小説「グリゼルダ」のシリーズの著者。実は本職は古典期ギリシアの考古学者なのだそうだ。Oliver Dickinson | RPG Designer | RPGGeek

*7:学者たちが湧いて出るグローランサ・コミュニティ……

*8:こちらの記事参照。ボールドホーム占領とルナーの財宝庫 - グローランサ備忘録

*9:the Serengeti. アフリカの タンザニア北部に広がる地理的地域。Serengeti - Wikipedia